MSC(モスト・シグニフィカント・チェンジ)は、欧米のNGOが使っている参加型・質的評価手法です。1990年代にリック・デイビース博士によって考案されました。日本では、参加型評価センターが普及に力を入れており、これまでに(NPO)日本NPOセンター様(震災復興事業)、環境省様(ESD事業)、トヨタ財団様(地方創生事業)などの評価に採用されました。
MSCの基本は、評価の際に、①プロジェクトの現場からインタビューなどで「重大な変化」の物語(エピソード)を集める(データ収集)、②複数の「重大な変化」の中から話し合いで「最も重大な変化」の物語を一つ選ぶ(データ分析)、③どの物語がなぜ選ばれたか、という選択結果を現場に還元(フィードバック)する、という3ステップを行うことです。
MSC手法の特徴は、人間の意識や行動変容など、数量化できない質的(定性的)な変化をエピソード(物語)の形で生き生きと把握できることです。またグループ討論で複数の「変化の物語」を、比較・検討することで、質的(定性的)分析が可能になり、変化の背景や要因(促進要因・阻害要因)など教訓を学び、事業を改善することが可能になります。またロジック・モデルやログフレームなどで予測が難しい、「想定外」の波及的な変化を把握できる点が優れています。
MSC手法のもう一つの大きな特徴は、プロジェクトの受益者やスタッフなどが容易に参加できることです。「物語を話す」ことや「重大な変化を選ぶ」ことはプロジェクトのスタッフや受益者など誰にでもでき、特別な専門性や能力を必要としません。MSCを通じて、評価結果に現場の受益者やスタッフの声を反映させ、説得力のある評価結果を導き出すことができます。また評価プロセスに関係者が参加することを通じて、オーナーシップやモチベーションが向上するといったエンパワーメント効果が期待できます。
さらにMSCは、組織学習に効果的と言う特徴があります。組織学習とは、プロジェクトを改善するための教訓を学ぶだけでなく、プロジェクトを実施している組織そのものを改善・成長させていく教訓を学ぶことです。MSCを通じて、組織が大切にしている価値観について確認したり、問い直したりしていくことが可能になります。